親に「ぼく、これ好き?」ときいて確認してからでないと食べ物に手をださない子、手作りのお菓子を「ださい」と敬遠し、市販のスナック菓子なら1袋でも食べきってしまう子、見なれた食べ物でないと箸をつけない子。子育て中に多くの子供たちを見てきましたが、自分で食べて味わう前に、まずは頭で判断してしまう子が少なくありません。大人たちも雑誌やテレビで「究極の味」「絶品」と紹介されたものとなると、「自分がおいしいと思えないのは自分の舌が悪いにちがいない」と考え、自分の感覚に素直になることができずにいます。そして、グルメ番組がこれほど溢れ、世界中の美食を口にすることが可能な日本で、日常の家庭の食事はむしろ豊かさとは逆の方向に急速に向かっています。
私たちは食べずには生きていけません。それなら毎日繰り返されるその行為をもっと楽しめたらいいと思いませんか。今までの日本の食育の多くは、栄養の知識の伝授か、料理の作り方かに集中していました。こうしたことが重要なのは確かです。でも、食への関心がなければ、知識も技術も身につきません。今まで日本の食育に欠けていたのは、食を楽しむという視点です。私はこれがこれからの食育の原点であるべきだと考えています。
「食の探偵団」の柱とするところは次号以降で順次紹介していきますが、最も重要なのは、「先入観にとらわれずに五感で味わい、感じたことを表現してみること」と考えています。差を感じることができなければ、その差を表す言葉も必要なくなってしまいます。子供たちの表現が画一化していると言われるのも、私たち日本人が、大人も子供も、じっくりとものを感じたり考えたりする余裕をなくしているのが理由かもしれません。