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食の探偵団
vol.3自分の言葉で表現しよう  

 「食の探偵団」では、五感で感じ、感じたことを自分の言葉で表現することを大切にしています。身近な食材をとりあげて、色は、香りは、味は、後味は、手触りは、そして食べた時の音は?といったことをじっくり考察していくのです。
 干し芋を題材にした時は、「茶色っぽいけれど、ところどころ薄緑色に見える。手でさわるとベタベタ。口の中で歯にねっとりとくっつく。よく噛んでいると甘みがじわっとひろがる。甘い香り。ひなたの香り。まわりに白い粉がついている」といったように、小学校低学年の子たちからもさまざまな表現がでてきて、いつもホワイトボードに書ききれないほど。表現力がないといわれる最近の子供たちですが、ゆっくり時間をとり、機会を与えれば、こんなに多彩な表現がでてくるものか、とこちらが驚かされます。

 ある時、サンドイッチを作って食べて、その「観察結果」を発表してもらっていた時、小学校4年生の男の子が「そよ風がふく草原でのピクニック」と発言しました。お手伝いに入ってくれていたお母さんたちも一瞬「?」と首をかしげたのですが、その後、皆笑顔になりました。きっとその子はサンドイッチをもって家族や友達と「そよ風がふく草原でのピクニック」を楽しんだ思い出をもっているのでしょう。その子の素直さ、家族とのかかわりまでが透けてみえる表現で、こちらまで幸せな気分になりました。こんなふうな食の体験を積み重ねて育っていけば、彼は毎日小さな幸せを見つけていけるに違いありません。

 大人のプログラムの場合、素直な表現がでてくるまでには子供より時間がかかります。「あまり平凡なことをいいたくない」とか、「ちょっといいところ見せたい」などといった意識がどうしても働いてしまうのかもしれません。あるいは、「こう発言しておけば、とりあえず間違いではない」といった思いが先行してしまうのかもしれません。アンチョビを試食した時にも、「パスタとあわせて食べたいと思いました」といったことがまず初めにでてきてしまうのです。自分でその場で味わっての観察というよりは、今まで得た知識に基づいた回答が多いのが残念です。


 今や有名になりましたが、ソムリエの田崎真也さんがソムリエコンクールで優勝した時の様子が当時NHKで放映されました。香りを表現する語彙はフランス語に断然多いので、フランス語で挑戦したのだそうです。ワインを口に含んではその印象を表現します。また口に含み、そしてまた、と時間の経過で変わるワインの味わいを、自分の感覚と語彙のすべてを総動員して言葉に変えていくその様子は、テレビを通して見ていても迫力がありました。
 
 ワインを題材にしてしまうと、つい必要以上に構えてしまうと思いますので、今回は、もっと身近な食べ物を用意しましょう。下の写真をご覧ください。そして、その食材を思い浮かべてどんな言葉で表現できるか考えてみてください。できれば実際にそれを手元に用意して、目で、鼻で、耳で、手で、口でじっくり観察して、感じたことを紙に書き出してみましょう。こういう言葉がでないとおかしい、といったことはありません。万人に共通の正解がありえないのは、前回の色についての感覚と同様です。自分の感覚だけに頼って観察してみましょう。できるだけたくさんの言葉で表現してみましょう。あなたはどれくらい書けましたか?
 

枝豆

黒ビール

甘夏

梅干し
 ちょっと余談です。エスキモーの言葉には雪や氷を表現する言葉が多いといいます。日本ではたとえば雨に関しての語彙って多いと思いませんか?違いを感じ分ける必要があれば、その違いを表現する言葉が生まれるということなのでしょう。それでは、食を巡る感覚についての語彙に限定した場合はどうでしょう?フランス語では香り、では日本語ではなにが多いと思いますか?ある研究によると、食感を表す言葉なのだそうです。世界各地の言葉をそんな風に比較研究したら面白そうですよね。
     
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