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食の探偵団
vol.4 感じてみよう  
 小学校5年生の娘が、「木の葉はパラパラ落ちる?それともハラハラ?」ときいてきました。娘を含むクラスの多くがパラパラだと思うのに、正答がハラハラなのが納得いかなかったようです。私にとってみれば「パラパラ落ちる木の葉」の方がよほど違和感があるのですが…。

 言葉の感覚が時代とともに変化するのは自然です。ただ、今の私たちの生活の中では、物事や気持ちをきちんと表現してみようという努力をすることが少なくなっているように思えます。フランス味覚研究所のジャック・ピュセ氏は、差が認識されなければその差を表現する言葉も必要なくなってしまう、として、じっくりと観察し、その差を味わいわけることの大切さを指摘しています。きちんと表現しわけようという努力をせずにずっと過ごしてしまうと、差を味わいわけることに意味を見出すことすらできなくなるかもしれない、といったら言い過ぎでしょうか。

 私たちの周りを見ると、「いつ行っても、どこの店で食べても同じ味」ということが安心なのか、ファミリーレストランやファーストフードなどの大チェーン店が林立してきています。ここでいう「安心感」は、お袋の味、家庭の味が与えるそれとは異質のものです。こうした店の多くは、工場で集中調理して輸送し、店では温め盛り付けるだけというシステムで動いており、各店舗においては、調理技術は基本的に不要です。そして大量に同じ規格の食材を必要とするために、多くの場合海外からの輸入食材が使われ、更には調理済み食品を輸入するといったこともあたりまえになっています。

 一方で、テレビなどでおいしい店と取り上げられると、自分自身の感覚に素直になれずに、おいしいと思えなくてもおいしいと無理に感じてしまう、その店で食べるという行為自体が目的になってしまう、そんな状況も見えてきます。作り手や店によって違う雰囲気や味を楽しむというよりは、情報としておさえておかなくては、といった思いが優先している場合も少なくないように見えます。


 前回に続いて「表現」がテーマですが、少し違った形で皆さんに試していただきましょう。左の写真を見て、その状況をどう表現するか考えてみてください。「米を○○○研ぐ」「ワインを○○○そそぐ」「かつお節を○○○削る」「お湯が○○○沸いている」「きゅうりを○○○切る」「せんべいを○○○食べる」「とうもろこしを○○○食べる(齧る)」。あなたならどんな言葉が浮かびますか。

 今度は言葉から出発してみましょう。「ふっくら」「ポリポリ」「ねっとり」「さくさく」「ことこと」「ぱらぱら」「ほろほろ」「ジュクジュク」「ふんわり」「あつあつ」「ほっこり」「爽やか」「すっきり」こうした言葉からあなたはどんな食べ物を、また料理の仕方を連想しますか。お子さんがいらっしゃる方は、是非ご一緒にやってみてください。

米を○○○研ぐ

ワインを○○○そそぐ

かつお節を○○○削る

お湯が○○○沸いている

きゅうりを○○○切る

せんべいを○○○食べる
とうもろこしを○○○食べる
 「五感を使ってみよう。感じたことを表現してみよう。」これは「食の探偵団」で、繰り返し参加者に伝えているメッセージです。自分の感じたことを感じたままに伝えようとすれば、語彙を豊富に持つ必要があるのはもちろんですが、それ以上に大切なのが「感じる」ことです。忙しい毎日を過ごしてはいても、たまには意識的に立ち止まって感じ、考える、そんな時間を持つことで、食に限らず、私たちのまわりの物事がより鮮明に意識されてくるのではないでしょうか。意識された香りや色彩、感触や音、それらは、私たちの日々の暮らしを豊かにしてくれるはずです。

 秋になったら舞い散る木の葉を見ながら、それを表現する言葉を娘と探してみたいと思っています。パラパラでもハラハラでもない、木の葉を二人で感じることができたら、その瞬間は私たちにとって大切なものになるに違いありません。
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