今回は、副団長の田平が、昨年11月に行ったこの「食の探偵団 企業版」をレポートします。
当日集まってくれたのは、各部門の若手の有志たちで平均年齢20歳代(?)の男女がおよそ40名、中にはシェフも。全員が、何か今後に役に立つものを得ようと、貪欲に積極的に取り組んでくれました。
3の正体あてクイズと4の錯覚クイズは、ここでもとても盛り上がりました。3のオイルの中には、難易度が高いと思われたマスタードやギーを入れていたのですが、動物性の匂い、バターに似た味、と香りや色、味の記憶を深く深くたどっていく内にギーまでも正解を導き出した方がいました。
マヨネーズについては、今回は、3色のお皿とも同じものをのせていました。最初のうちは、「赤が一番濃い味」「みどりはさっぱり」などの意見が飛び交い、すっかり皿の色にだまされ、メーカー名あてクイズといった様相にもなっていたのですが、そんな喧騒を破ったのは、じっくり目を閉じて味を確かめていたシェフの「全部同じマヨネーズ」というひとこと。さすがでした。
お互いに食経験に驚いたり共感したりして話が尽きなかったのは、味覚のふるさとを探るプログラム。おやつや給食、お母さんの味など、“食べ物”と“場面”と“自分の気持ち”が一緒になった興味深い話を交換しました。久しぶりに思い出した自分の記憶を懐かしむと同時に、同僚の仕事中とは違う一面を見ることもできたようです。(味覚のふるさとのプログラムについて、詳しくは「食育の現場からVol.8」をお読みください。)
最後は、探偵団初登場の音のプログラム。普通のボリュームで音楽が流れているときは、みんな、サラダの味について話し合ったり(最初に切ったにんじんをモロッコ風のサラダにし、試食していました)、会話が弾んでいましたが、大音量にしたとたん、パタッと消えてしまいました。また、工事現場の音を流してみると、こんどは、きょろきょろと落ち着かない人がみられるようになり、ほぼ全員が食べることも話すことも止めてしまいました。
巷のレストランや喫茶店などでは、BGMが当たり前のように流れています。でも、BGMは、何のためにあるのでしょうか。仲のよい友達同士で来ている人たちは、楽しい会話があればBGMは必要としていないかもしれない。一人で利用している人は、時折BGMに耳を傾けているかも。仲間や知人とともに来ていても、ちょっとした会話の隙間をBGMがうめてくれたり。人それぞれだと思います。せっかく店の雰囲気に合った曲を流しているのに、システムの不備なのか雑音が多くて耳障りに感じる、ということもあります。なにげなく流してしまっているBGM、時には、なしという選択肢もあるのではないでしょうか。
最後に、こんな質問を受けました。「オイルやマヨネーズのプログラムは、正解がありますが、味覚のふるさとや音のプログラムには、正解がありません。正解がないものについて、どのように受けてとめればいいのか、ちょっと戸惑っています。」というような内容でした。
味の違いがわかり、当てることができるって、すごいですよね。なぜ、そんなことができるのかというと、自分がいかに食の記憶をたくさん持っていて、その記憶をひっぱりだすことができるか、ではないかと思います。正解があるプログラムもないプログラムも、じつはその過程を重要視しています。食の記憶を自分自身の引き出しにつめていって、それを時には引き出してながめたりするうちに、食を楽しむ幅のようなものが広がっていくのではないかと思うのです。
2005年01月 田平恵美