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食の探偵団
vol.12 「食の探偵団」」レポート“味覚のふるさと” 2005.05  
 以前このコラムで、「味覚のふるさと」というプログラムをやってみたいと書いたのですが、その後、何度か実際に行う機会がありました。思わずクスッと笑ってしまったり、羨ましいなあ、素敵だなあと感じたり、時にはホロッときたり。想像していた以上に、ほんとうに興味深くて、私の大好きなプログラムになりました。

 では早速、やってみましょう。目をつぶってください。あなたにとっての味覚のふるさとってなんでしょう?小学校の給食の思い出?はじめての買い食い?お母さんの留守にお父さんが慣れない手つきで作ってくれた夕食?
  1分間、そのことをできるだけ細かく思い出してみてください。
 はい。それでは、今思い出したことを、紙に書いてみましょう。

 食の探偵団では、5〜6人でグループを組みます。それぞれの人がこうして書き出した「味覚のふるさと」を、グループの中でお話してもらいます。ひとつひとつがとても貴重で素敵なお話です。

  30代の女性の話。「運動会の日に、たまたま母が泊まり掛けででかけなければならなくなって、お弁当どうしようかって、妹と二人で相談してたんです。しょうがないから店で買ってきたのを詰めようかって。そうしたら、父が作るっていうんです。でも段取りが悪いから時間がかかるんですよね。できあがった重箱入りのお弁当を持ってきてくれたのはもう昼。私たちの競技は見ることができなかったのですが、エビや卵やいろいろ入った豪勢なお弁当で、友だちに羨ましがられたのを覚えています。」
 50代の男性の話。「漁師町に生まれて、おかずといえば毎日魚。今思えば贅沢だったけれど、子どもだった当時は、一度でいいからハンバーグを食べてみたかったんだよね。ある日母親が「今日はハンバーグよ!」というので、大喜びで食卓についたら、ハンバーグはハンバーグでもいわしのハンバーグで、糠喜びってのはこういうもんかな、と思いましたよ。」
 30代の女性の話。「米どころに育ったので、刈り入れの季節になると、村中が独特の香りに包まれるんですよ。空気も金色に染まるような感じで。毎年のことですけれど、『あ〜、もうすぐおいしい新米が食べられるな』っていつも思ってたんですよね。」
 40代の女性の話。「子どもの頃、いつも岩のりを人からいただいていたんですよ。と〜ってもおいしかったんです。東京に来てから、自分で岩のりを買ってきてたべたら、全然別物で驚いてしまって。実家の母にきいても、いただいていたものだから、どう手に入れたらいいかもわからないというし。その岩のりは乾燥したものではなくて生だったんです。ほんとうにおいしかったんです。」
 40代の女性の話。「子どもの頃バナナアレルギーで、でも一度食べてみたかったんです。ある日母の留守中に、こっそりバナナをもって裏の畑に隠れて食べました。でも『なんだ、こんな味か』と、長年の夢のようなものが急にしぼんじゃったんですよね。」


 家庭の風景、時代の雰囲気、土地の香り、色彩、いろいろなものが見えてきませんか。こんな話をした後って、その人との距離がふっと縮まるような気さえします。食の力ってすごいな、と思うのです。味だけじゃない、香り、色、音、一緒にいる人、風景、すべてが一緒になって、その人にとっての「味覚のふるさと」になっているんだなあ、と改めて思います。

 で、最後に、「では今の子どもたちが大人になったとき、何をもって自分の味覚のふるさとというんでしょうね?」なんていうと、ちょっとオドシみたい?

2005年05月 サカイ優佳子



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