興味のはじまりはその時からです。しかし、「患者さんのために」と言いながら、興味はいつしか自分の知を満たす「欲」になっていました。私は自分を偽善者だと思いました。
そんな時、NHKのドキュメンタリー『アインシュタインロマン』を久しぶりに見ました。内容はともかく、アインシュタインの「科学」と「ロマン」が調和した考えは、受け手によって「科学」だけに振り分けられ、一緒にあった「ロマン」は消えてしまったんだなぁ、と思いました。また「ロマンを置き忘れたまま、科学を使って自分の興味を満たす事」、それがどんなに危険なのかもわかりました。
この時から「どのくらいの栄養が必要なのか」という事も大切だけど、「無理に食べようとするのは、どんな思いからなのか」という事も大切だ、と考えるようにしました。
そして今も「栄養」や「食べること」を考える時、「科学」の視点と「ロマン」の視点を忘れていません。
けれども「食育」を考える今、「食育」の何が「科学」で何が「ロマン」なのか、見えてこないのです。時間はかかるかもしれませんが、みなさんとともに「食育」の「科学」と「ロマン」を考え、しっかりとした「はじめの1歩」を踏み出せるように、と思っています。
土澤 明子 2004年3月