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食育に科学とロマンを

その9 :「空腹」というごちそう  

公園にあらわれた
はらぺこイノシシ

 昔と違って、好きなものを好きなだけ、好きな時間に食べられるようになった今、「腹時計」という言葉も聞かれなくなりました。食事の仕度時に台所から漂うにおいにつられ、お腹が空いて“グー”となる子どもが、どれくらいるのでしょうか。
ある日、給食当番の子どもが「あーお腹空いた!“グーグー”だよ!」と言って駆け寄ってきました。「いいね、からだは準備オッケーだね。おいしく食べられるね」と声をかけると、「“グー”って給食の前だけだよ」と子どもは言いました。この言葉を聞いた私は、腹ペコで食事をする体験が少ないんだろうなぁ、と思いました。“グー”という空腹の合図が、いったいなぜ、給食の前だけになってしまうのでしょうか。

“グー”と空腹を知らせる腹時計は、血液中のブドウ糖、つまり血糖が低くなると、脳が「ブドウ糖が欲しいよぉ!早くご飯を食べさせてよぉ!」と命令し、胃や腸などの消化管を動かして、ブドウ糖の取り込みをする準備が始まった合図です。脳は大変な食いしん坊で、しかもブトウ糖だけをエネルギー源にしています。その脳を動かすエネルギーがなくなって困っているから、“グー”と空腹のサインを鳴らして食事をさせようとするのです。

ということは、「“グー”って給食の前だけだよ」と言った子どもは、家庭では空腹を感じることなく食事をしているということですが、朝は空腹というよりも、脳自身が寝ぼけていて“グー”のサインが上手く出せないのかも知れません。しかし、夕食は別です。夕食の前に“グー”という空腹の合図が聞こえてこないのは、何かを食べて脳のエネルギーを補給しているか、あるいは体調が悪いかです。

空腹は、食べものを「おいしい」と思わせ、消化の準備を開始し、何でもごちそうにしてしまう仕組みです。少々苦手な食べものでも、お腹がペコペコなら食べられることも多いです。だから、たとえ空腹だったとしても、食事の前には食べさせないようにすると良いのですが、子どもは「お腹が空いて死にそう」などと言います。でも、1食抜いたくらいで人は死にません。そんな時は、「これからご飯でしょ!」と怒るのではなく、譲らない態度で食べさせなければ良いのです。感情的でない、親の毅然と譲らない態度は、子どもたちの社会性を身につけるためにも良いと思います。

土澤 明子 2005年2月

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