今年も、親戚が大事に育てたリンゴが送られてきました。早速ダンボールの中から一番赤いリンゴを選び、よ〜く洗って、包丁を手にした時、ふっと思いました。皮なんて剥かなくても食べられるのに、なぜ皮を剥いて食べようとするんだろう、と。
歯茎から血が出ないことを示すCMでは、真っ赤な皮付きのリンゴをかじっていました。うさぎに見立てたリンゴの長い皮の耳は、残すことなく大事に食べていました。洗ったリンゴを手にして自動的に包丁を持つ自分。それに疑問を感じなくなってどれほどの時が経つのでしょう。いつから皮を食べない習慣がついてしまったのでしょう。それは、皮を食べない方が良いからなのでしょうか。
リンゴの皮には、水溶性の食物センイ「ペクチン」が多く含まれています。「ペクチン」は、ブドウ糖の吸収を抑え、食後の血糖値の上昇を緩やかにするほか、コレステロールの吸収も抑制するので、生活習慣病の予防に役立ちます。また、ポリフェノール類の「ケルセチン」という抗酸化物質も含まれており、活性酸素が細胞を壊すのを抑えます。からだ良いとされる成分の多くは、皮にあるのです。
心配なのは農薬です。しかし、ある調査によれば、リンゴの残留農薬は、通常心配するような量ではないと言います。たとえば、殺菌剤が及ぼす身体への影響は、体重50kgの人が、皮だけを毎日40kg食べ続けた場合に出現すると考えられています。また、リンゴの皮がベタベタしているのは、リンゴ自身が出すオレイン酸という脂肪酸で、ワックスではないというから、何が皮を食べない理由なのかわかりません。ですので、皮を食べるかどうかは、各々の嗜好でどうぞ、といったところでしょうか。
食べものを食べられる限り全部いただいて、命を自分に移しかえ、血や肉とする。毒でない限り(毒も薬として使える場合が多くあります)、残すところなどないはずです。食べものは、まるごと食べればこそ、多くの種類の栄養素がとれて、大もうけなのです。まさに、まるごと食べてまるもうけ。自分も食べものも大喜びです。
土澤 明子 2005年12月