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食育に科学とロマンを

その21:春、ただいま発芽中  
 

新しい学年になると、新たな活動が始まります。小学校では、高学年になると委員会やクラブに所属し、ワクワク、ドキドキしながら、たくさんのことを学んでいきます。新学期早々新4年生のA子さんが、かわいらしいピンクのレースのブラウスと、フリルのスカートを風になびかせながら「料理クラブ」に入れたと、大喜びで報告にきました。

始めてのクラブ活動の日、お手伝いがてらA子さんの様子をちょっと覗きに行ってみました。新6年生が指示を出しながら作業をし、早速、お兄さん、お姉さんぶりを発揮しています。こうやって新たな役割や仕事を与えられた時、その子の持つ能力が、また1つ発揮されるのだ、と思いました。さて、大喜びだったA子さんはどうしているでしょう。

その日のメニューはホットケーキと紅茶です。A子さんは、エプロンや手、腕まくりした肘にまで、真っ白の粉をつけながら、真剣に粉や牛乳などを計量しています。慣れない手つきでコンロの火をつけ、フライパンを温め、バターを溶かし、自分のホットケーキを焼き始めました。フライパンの中をじーっと眺め、コンロの前で仁王立ちです。薄っすら煙が見え始めたので「そろそろいいよ」と、声をかけようとした時、6年生が手を取りながらホットケーキをひっくり返しました。2人は、濃い茶色のマダラ模様に少しがっかりした表情です。A子さん、今度は6年生に出来上がりのタイミングを聞きながら、焦げないように慎重です。そして、今度はOK!ニコニコしながら出来上がったホットケーキをお皿に盛り付けました。私は「出来たね、早く食べたいでしょ」と、声をかけました。満足そうなA子さんの笑顔に、私も嬉しい気持ちでいっぱいです。

その時、私は意図もなく、ただ何となく「どうして料理クラブを希望したの」と、A子さんに尋ねました。すると、A子さんはこう答えました。「お手伝いさせてもらえないの。料理やれないの。キッチンとお洋服が汚れるから、ママがダメって」と。私は「料理クラブに入ったんだから、たくさんおいしいの作ってね」と、精一杯の声をかけ、このマダラ模様に焦げたホットケーキでよいのだ、このマダラ模様に焦げたホットケーキだから意味があるのだ、と、思いながら、上を向きながら部屋を出ました。A子さんの中の「料理」の種が発芽して、本当によかったね。

土澤 明子 2006年4月

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