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食育に科学とロマンを

その32:箱いっぱいの達成感

 
 

「親は決して手伝わないでください」。こんな声かけとともに、献立作りから、買い出し、調理、箱詰めまで、子どもだけで作る“弁当の日”に取り組んだ学校があります。

“弁当の日”は、当時香川県の小学校に勤務していた竹下和男校長により、(1)子どもだけでつくる(2)対象は5・6年生のみ(3)実施は10月から毎月1回、を原則に、平成13年度から実施されています。

“弁当の日”について多くの子どもは、「楽じゃない」「面倒」「難しい」などと感想をのべています。しかし同時に、「でき上がった時、ものすごくうれしかった」と喜び、「おいしそう。今度作り方を教えてね」と友達と知恵の交換をし、「毎日食事を作ってくれる人の苦労がわかった」と感謝の気持ちを表しています。

一方保護者は、「包丁もあまり持たせたことがないので悪戦苦闘した」とか「何も知らない、何もできない、根気がない、親としてショック」と話すものの、「“弁当の日”は子どもと向き合ういい機会を与えてもらった」と感想をのべています。

竹下和男校長は、「私が“弁当の日”で変えようとしたのは、子どもではなく、子どもを取り巻く環境。これが広がれば日本が変わる」とおっしゃいます。また、卒業文集に寄せられたあたたかい言葉は、見守る者の想像力をも養ってくれます。いくつか私の好みで抜粋しますので、原文の竹下和男著「弁当の日がやってきた」(自然食通信社)を是非ご一読ください。

・・・友だちや家族の調理のようすを見て、技を一つでも盗めた人は、自ら学ぶ人です。
旬の野菜や魚の色彩・香り・触感・味わいを楽しめた人は、心豊かな人です。
シャケの切り身に、生きていた姿を想像して「ごめん」が言えた人は、情け深い人です。
調理をしながら、トレイやパックのゴミの多さに驚いた人は、社会を良くしていける人です。   
家族が手伝ってくれそうになるのを断れた人は、独り立ちしていく力のある人です。・・・

口をはさみたい、手伝いたい、そんな気持ちを抑えて「見守る」こと。それは大変労力のいることです。でも、そうやってこころを砕きながら見守ってくれる人がいるからこそ、子どもは安心して持っている可能性を伸び伸びと発揮できるのだと思います。

土澤 明子 2008年3月

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