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食育に科学とロマンを

その33:食べかたを忘れた渡り鳥

 
 

近頃の人間界では、内臓にたっぷり脂肪をつけたメタボリックシンドロームなるものが話題です。はたまた、肝臓に脂肪がホアグラのごとく溜まった脂肪肝を、どうしたものかと考えあぐねる人間様もいるようです。太りすぎた人間様は、みなこぞって肥満解消に勤しんでいます。ところが最近、自然界の渡り鳥も深刻な肥満の問題に直面しています。

渡り鳥は日本で越冬し、暖かくなってきた頃に繁殖地のシベリアに帰って行きます。けれども越冬中に太ってしまい、飛べなくなってしまったり、エサを捕れなくなってしまったりして、シベリアに帰れない。しかも、太り過ぎてホルモンバランスが崩れ、繁殖に影響が出ているというのです。

この渡り鳥の肥満問題は、一体なぜ起こったのでしょうか。それは、人間様がやるパンなどのエサを、渡り鳥が食べ過ぎているためでした。原因が人間様と判明したからには対策です。東京都環境局は、昨年12月から今年3月末まで「カモのエサやり自粛キャンペーン」を不忍池で行いました。

池で暮らすカモにちぎったパンをやっている人間様の姿。そのパンに群がり、目の前にある限り食べ続けるカモの姿。そんな姿を思い浮かべると、人間界で日々耳にする「お腹が空いてなくても、目の前にあるからつい手が出てしまう」とか「なければ食べないのに、買ってくるから食べる」などといった食行動と重なります。

そもそも野生の動物は満腹になればそれ以上食べません。人間様のように目の前にあるからといって食べ続けたり、別腹といって他の食べものを食べたり、美味を求めたりしません。しかし、日々エサを与えられて飼いならされた渡り鳥は、人間界の住人となり、人間様の食べかたを真似ているようです。もしかすると、「郷に入っては郷に従え」と思っているのかも知れません。

人間様はついに自然界まで肥満を広げてしまいました。人間様はこのことに一刻も早く気づき、自然界をもとに戻さなければいけません。さて、食べかたを忘れた渡り鳥の命運はいかに。


土澤 明子 2008年4月

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