「え〜それってカロリーオーバーじゃん」
「でもお腹空いてるし〜」
「帰ってからご飯食べるんでしょ、ダメなんじゃない」
と、3人の女子高校生がお菓子屋さんで話しています。どうやら部活の帰り道、空腹に耐えかねているようです。会話はさらに続き・・・。
「これって炭水化物ばっかりじゃん」
「でもこっちは油が多いし」
「キャー小さいくせにこんなにカロリー高い〜」
「この前授業でやったじゃん、油は砂糖よりカロリーが高いって。これ油が多いから小さくてもカロリーが高いんだよ。聞いてなかったんでしょ」
「どうして油が多いってわかるの?」
「も〜全然授業聞いてない。原材料は使った材料が量の多い順に書かれてるのっ」
「へぇ〜」
3人は思い思いのお菓子を握ったまま仁王立ちです。そのいじらしい姿に思わず声をかけました。
「みなさん立派だね。立ち聞きしてごめんね。私栄養士なの、お菓子選びに困っているみたいだけれど、どれが食べたいの?」
「私は白あん入りのバナナ形カステラ3個入りにしようかと思ってます」
「私はじゃが芋のスナック菓子です」
「私はチョコレートのしみ込んだやつがいいです」
「ふ〜ん、で、何キロカロリーくらいのお菓子がご希望?」
「わからないです」
「え〜わからない?なのにエネルギーが気になるの?」
「だって太るもん」
と、3人は声を揃えて言いました。私は何をどう言うべきか悩みつつ、
「太るのを気にしてエネルギーに注目する気持ちはわかるけど、さっきみたくちゃんと表示を見て、材料とエネルギーが多い理由を考えて食べる方がキレイになれるよ。ともかく洋菓子よりも和菓子を選ぶと油が少ないし、揚げてるものより揚げていない方が低エネルギーね」
「じゃあ、スナック菓子よりバナナのお菓子にしよう。和菓子だからね」
「あっ、バナナのお菓子に“植物性油脂”って書いてありますよ」
「でも後の方に書かれてるからスナック菓子より少ないですよね」
「えらい!よく見分けた。“植物性油脂”はカステラ生地に使われているのよ。でも揚げてないからスナック菓子よりエネルギー低いでしょ」
「表示見ながら、またお店1周してきます。ありがとうございました!」
と、3人は再び楽しそうにお菓子を選び始めました。
残念ながら彼女たちがどんなお菓子を選んだのか見届けることはできませんでした。けれども、興味を持って話し合ってくれた彼女たちのキラキラした目に頼もしさを感じ、食の崩壊がいわれる日本もまだまだ捨てたもんじゃないわ、と、とっても嬉しくなりました。今日のお菓子選びが、彼女たちの未来への足跡になりますように。
土澤 明子 2008年6月