「“1日30品目”食べることにしているんです。サラダは緑黄色野菜を中心に10品目。みそ汁も海藻やキノコを混ぜて1日2回で10品目。残りは果物で3品目。肉は食べませんから、魚、卵、豆、豆製品と、チーズ、牛乳、ヨーグルト。主食は玄米とライ麦パン。砂糖と油は使いませんが、はちみつとゴマやきなこはからだにいいからたっぷり使うんです。毎日30品目以上、食事はキッチリやってます」と、言い切るAさん。
キッチリ食事をしているのに中性脂肪が高いとご立腹です。
食事記録に書かれた野菜サラダには確かに10種類の食材。高級そうなドレッシングも毎食味がかわります。小さい文字が所狭しと並び、書くのも調理するのも大変だったろうと思いつつ、この強迫的ともいえる30品目の呪縛をどう解けばいいのか。加えて中性脂肪の高さは、乳製品や果物、ゴマ、きなこ、ドレッシングなどをたっぷり使っていることが理由でしょうから、キッチリやっているというAさんにどう説明すると納得してもらえるのか。と、悩みます。壁は高く厚い…う〜ん…、ヒラメキましたウルトラC!
普段から知恵袋にさせてもらっている伏木亨さんの「ニッポン全国マヨネーズ中毒」という本があります。そこには、七味とうがらしと十六茶で1日30品目がクリア!と、ユーモアたっぷりに書かれています。このパンチの効いた裏技が妙に説得力をもつので、「お知恵拝借」とひらめいたのです。
そして私はAさんに「確かに“1日30品目”食べることはいいことですよね。でも、食事の支度が大仕事になって疲れちゃいませんか?食べる頃にはグッタリなんて…」。と言ってみると、Aさんは頷きます。さぁついにきました裏技提案の時。
「私も“1日30品目”食べた方がいいと思っていますが、無理。でも“1日30品目”食べないとなぜか気持ちが落ち着かない。だから裏技使って納得させてるんです。例えば、五目ご飯と十六茶と七味唐辛子を食べれば、1食だけで28品目。あと2品は何とでもなります。これで気が休まります」。そう話すと、Aさんは小さくプッと噴出しました。そして、「30品目を食べることって、そんな程度のことなんですか…」と、硬かった表情は柔らかくなりました。中性脂肪の高さはともかくも、品目数の呪縛が解けてよかったです。