一昨年の冬、釣の好きな友人に頼まれて魚の形の「箸置き」を作りました。しかし、人様に差し上げるには、はばかれる作品が数多く出来上がりましたので、それらは自分用として手元に残しました。しかし、収集していた他の箸置きとともに、未だ食卓にデビューすることなく、箱入り娘のままです。
ところで、私たちの食生活に欠かせない箸ですが、これを正しく使う人が少なくなったといわれています。恥ずかしいことですが、食べることを職業にしている私も、間違いなく箸を正しく使えないうちの1人です。
箸の文化を調べてみると、中国で約3400年前の殷朝の都・殷墟から食器などと一緒に青銅製の二本箸が発掘されています。これが最も古い箸のようです。それは日常の食事に使ったものではなく、祖霊の供え物である礼器と考えられています。箸が使われるようになった背景には、手で食べることで不衛生になったり、熱い料理が手では取りにくかったりといった問題を解決する目的もあったようですが、麺類が庶民の食べものとして広まったのを機に食事に必要な道具になったのではないかといわれています。箸は世界各国で使われているわけではなく、東アジアとベトナムにみられる局地的な食作法です。
さて、私たち日本での箸文化のはじまりについては諸説あり、弥生時代や飛鳥時代、また具体的には607年に小野妹子が隋から持ち帰り、聖徳太子が朝廷の儀式に初めて採用したなどと伝えられています。いずれにしても、箸は食事を便利にする道具として使われ始めたのではなく、神様にお供えするものだったようですから、中国の箸と同じ意味合いを持っていたと思われます。現在は主に机にそのまま箸を置くと箸先が机に触れて汚れるので、それを避ける役割で使われています。これに加えて、箸は食事療法で減量に勤しむ方にもってこいのアイテムだと思います。
一口ごとに箸を置く、噛んでいる間は箸を置く。これは、早食いを防ぎ、食事量を減らすことに役立ちます。減量の方法の1つとして箸置きを使う、これはよい作戦だと思います。そして、あまり大きな口を開けずに美しく、おしゃれに食事をすればマナーもクリアできます。