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食育に科学とロマンを

その57:みどりキラキラ、茶柱ユラユラ

 
 

新茶の季節です。
先日75歳を迎えた叔母に新茶を差し出すと、「貧血っていわれてからお茶はお番茶しか飲まないの」と、すまなそうに言いました。貧血だから緑茶を飲まない?!?!叔母がどうして緑茶を控えているのか、その理由を聞いてみました。

叔母の答えはこうです。

「お茶のカフェインは鉄分の吸収を悪くするからね。せっかくレバーを食べても血になってくれないんじゃ意味がない。だから、とくにカフェインの多い玉露とか緑茶は飲まないの。もちろんコーヒー、紅茶もやめてるわよ」

確かに玉露や緑茶、コーヒー、紅茶には多くのカフェインが含まれています。でも、カフェインが貧血に影響を与えるとは思えません。もしかすると、「貧血を改善させる鉄剤は、タンニンを含むお茶などと一緒に飲むと効きが悪くなるので、鉄剤は白湯か水で飲みましょう」、という服薬指導が影響しているのかも知れません。
ならば、鉄剤を服用しているのか、と思ったら、服薬はしていません。よくよく聞いていくと・・・叔母の中で“タンニン”が“カフェイン”に書き換えられ、さらには“貧血の人はお茶を飲まない方がよい”と、大幅にズレた思い込みから緑茶を控えていたようです。

確かに以前、鉄はタンニンと結合すると消化管からの吸収が悪くなるので、「緑茶と鉄剤を一緒に飲んではいけない」というのが、服薬指導の常識でした。しかし、様々な臨床試験の結果、タンニンとの結合による鉄剤の吸収低下は服用量全体からみるとごくわずかで、薬の効果にはあまり影響しないことがわかっています。つまり今では、鉄剤の服用を水かお茶かで悩む必要はなくなりました。ですから、よほど濃いお茶をがぶ飲みしない限り、お茶やコーヒーだっていつも通り飲んでよいのです。

ちなみにカフェインの方は、胃酸の分泌を促進する作用があるので、解熱剤や鎮痛剤、喘息薬などの薬剤とお茶を一緒に服用すると、副作用が強くなる可能性があると考えられています。疑問点があれば薬剤師に質問してみましょう。

というわけで、叔母が緑茶をガマンする必要はなかったのです。
よ〜く説明した後、キラキラした緑色にユラユラと茶柱が泳ぐ新茶をお召し上がりいただきました。

土澤 明子 2010年5月

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