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食と歯の健康のかかわり

第4回 虫歯の仕組み:脱灰と再石灰化

 
  OLのAさんは甘いものには目がありません。大の甘いもの好き。ランチのあとのスイーツは毎日欠かせません。しかし、他に間食はほとんどしません。虫歯が心配で朝晩2回のブラッシングは十分時間をかけて磨いています。

 一方、IT関連の会社に勤めるBさんは、甘いものはあまり好きではありません。ずっとパソコンを見ていなければならない仕事なので、キーボードの横には常に、ポテトチップスなどの甘味のないスナック類をおいて、少しずつつまんで1日かけて食べています。コーヒーもよく飲みますが、いつもブラックです。ただ着色が気になり、オフィスでも食後や休憩時間には必ず、5分くらいかけてしっかりブラッシングをします。時には一日5回くらいブラッシングする時もあります。

 さてここで皆さんに質問です。AさんとBさん、どちらの方が虫歯になりやすい生活をしているでしょう? 
 前回までのコラムを読んでいただいた方は、もうおわかりかと思います。

 虫歯の知識のキーワードは、脱灰と再石灰化です。前回のコラムで虫歯菌の作用によりお口の中全体が酸性になってしまうことはご理解いただけたと思います。虫歯菌が酸を作り、口の中の酸性度が一定以上に高まる(phが下がる)と歯の表面のミクロの世界では、歯の結晶の構成成分であるカルシウムや燐酸が徐々にイオンとなって唾液中へと溶け出します。この現象を脱灰といいます。ところがここで、しっかりとマスティケートすると、唾液がたくさん出てきて、前回お話した唾液の中和作用(緩衝能)が働き、酸性度が中和されてきます。すると、溶け出していたカルシウムなどが再び歯へと戻りだします。飲食のたびに繰り返される、脱灰と再石灰の際のカルシウムなどの出入りのバランスが取れていると虫歯は出来ません。ミクロの世界の小さな虫歯は再石灰化して治ってしまいます。虫歯は、この脱灰と再石灰化の繰り返しのプロセスの中で少しずつ進行して行きます。

 つまり、脱灰が起こりやすい口腔内環境の人、再石灰化が起こりにくい口腔内環境の人が、虫歯になりやすい人ということになります。この環境を決める因子はいくつかありますが、先ほどのAさん、Bさんの例では、どうでしょう? 

  Aさんは甘いものを多く摂るので一見虫歯になりやすい様ですが、スイーツはいつも食後のデザートとして採っています。脱灰、再石灰化のプロセスはおおむね40〜50分の間に起こります。この間は唾液も十分分泌され、中和作用も進行中なので、食事と連続した形でのデザートは虫歯のリスクを極端に高くするものではありません。

 一方、Bさんは甘いものをあまり食べないので大丈夫そうに思えますが、前回お話したとおり、糖が入っていなくても、デンプン質があると糖が作られます。甘くないスナックでも、結果としてお口の中で、糖になってしまいます。Bさんは、少量だけれども、少し時間をおいて、すぐにつまんでしまいます。そのたびに、脱灰、再石灰化の反応が起こります。 唾液により中和され、再石灰化をしても、再び口に物が入るので、また、酸性になってしまいます。この状態はその都度うがいをしたとしてもなかなか変わりません。この繰り返しにより、脱灰が進行します。一日のトータルの脱灰時間が長くなり、毎日歯から少しずつカルシウム等が失われます。つまり、だらだら食いは虫歯を育てるのです。

 今回はまず、飲食のパターンから、虫歯のなりやすさをお話させていただきました。

  本来、虫歯のなりやすさのリスク因子は個人個人異なります。AさんBさんの例はあくまでも他のリスク因子がまったく同一であると仮定した場合の虫歯のなりやすさを比較した場合のお話ですので、Aさんが虫歯になりにくい食生活であるということではありません。食後のスイーツが毎日というのは禁物です!糖分の多い食生活は虫歯だけでなく健康の面からも問題あり!ですから。

  次回はまた違った側面から虫歯のなりやすさの比較をしてみます。

 

日本ヘルス歯科研究会スライドより引用
ピンク色の部分が脱灰、水色が再石灰化を示します。

ピンクの部分の面積の合計が、水色の部分の面積の合計よりも大きくなると脱灰が進行して、虫歯になります。

 一番上が規則正しい食事、真ん中は、緩衝能(中和作用)の弱い人、一番下は、飲食回数が多く、寝る前に飲食する人。
 
2005年5月 堀 滋

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