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TOP > コラム > 食育には「歯」が命
食と歯の健康のかかわり

第5回 虫歯菌はどこからやってくるの?

 
  虫歯の進行には色々な細菌がかかわっていますが、その代表選手はなんと言っても、ミュータンス連鎖球菌という菌です。この菌には2つの大きな特徴があります。まず第一に、糖が大好物で、糖を食べた結果として、歯を溶かす酸を作り出す性質があります。二番目は、少し難しくなりますが不溶性グルカンという、粘着性が強く唾液に解けにくいネバネバした物質を作る事です。彼らはこれが無いと、つばに流されて、口の中にとどまれません。生き延びようと、必死に歯にへばりつくのです。甘いものを食べた後などに、歯の表面が何となく、ヌルヌルした感じになるのが、この不溶性グルカンです。

 ですから、この菌の量の多い人のほうが、口の中が酸性にもなりやすく、不溶性グルカンも多く作られるため、汚れも落としにくく、虫歯になりやすくなってしまいます。

 このミュータンス菌の量は、医科での健康診断の血液検査や血圧の検査にあたる、あなたの虫歯のなりやすさの基準値のようなものです。この量は、人それぞれ異なりますが、同一個人では、その濃度はおおむね一定しています。

 この量が、唾液1ml当たり50万個以上の方が危険ゾーンです。そして、100万個以上になると、虫歯の再発のリスクが非常に高く、積極的な予防処置が必要です。現在ではこのような場合、3DS(Dental Drug Delivery System)という虫歯菌を除菌して、お口の中の虫歯菌の濃度を積極的に下げてしまうという、究極の予防法を受けるという選択肢もあります。また、皆さんご存知のキシリトールにも、この虫歯菌の活動を低下させる作用があります。スウェーデンでの研究により、キシリトール濃度50%以上のガムを一日3回から4回に分けて、3ヶ月間とり続けると、ミュータンス菌の量や活動性を低下させ、虫歯のリスクを減らすことが出来ます。さらに、キシリトールガムは唾液分泌量を増やすことによる再石灰化促進作用もあり、特にミュータンス菌の濃度が高めの方にとっては、簡単でさほど費用もかさまないお勧めの予防法です。ただし、ミュータンス菌濃度が高い方の中には、それだけミュータンス菌が住みやすい口腔環境であるという場合も多く見受けられます。基本的には、他の予防法に先立って、食生活を改善して飲食回数や糖分の摂取量を減らすことが最も重要なポイントになります。

 ところで、このミュータンス菌はどこから口の中にやってくるのかご存知でしょうか?
この菌は赤ちゃんに歯が生えてくるまでは検出されません。
と言っても、歯から生まれてくる?わけではありません。
この細菌を調べると、ほとんどの場合、母親ないしは直接育児をする人の菌と遺伝情報が一致しています。乳幼児期にスプーンやお箸などを介してお口の中に入り込むことによって初めて感染をします。ただし、口の中に入っても、乳児期の免疫力が高い時期や、歯がまったくない時期では、お口の中で増えることが出来ず、感染はしません。おおむね、1歳半から2歳半にかけての「感染の窓」と呼ばれる時期以外ではほとんど感染しないことがわかっています。また、感染をしても、お口の中の環境が良好に保たれていれば濃度が高くなることは避けられます。つまり、この時期における口腔衛生状態の管理や糖分摂取の仕方に特に注意が必要だということです。また、現在妊娠中の方で、虫歯菌濃度の高い方は、出産前に虫歯治療をすませておくことやキシリトールガムなどによるミュータンス菌のコントロールを行うことで、生まれてくるお子さんの将来の虫歯のリスクを確実に下げることが出来るのです。

 恐ろしいことに、お口の中の虫歯菌との戦いは、すでにあなたがおなかにいた時から始まっています。またその逆に、あなたのお口の環境を改善することが、次の世代の虫歯のリスクをも大きく減らすことにつながるのです。

 
 
2005年6月 堀 滋

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