「トランス脂肪酸」をご存知ですか。時折 “食べるプラスチック”とか“狂った脂肪”などと表現されるので、危険な印象を持ちますが、「そんなバカな…」とも思います。
トランス脂肪酸は、液状の油に水素を添加する加工の過程で生じ、マーガリンやショートニングなどに含まれています。ショートニングはサクサクした食感が出せるので、お菓子などに広く利用されています。
健康への影響については、トランス脂肪酸を過剰に摂取すると、血液中のLDLコレステロール(いわゆる悪玉)が増加し、HDLコレステロール(いわゆる善玉)が減少します。そのため、動脈硬化を促進し、狭心症や心筋梗塞などになりやすいと言われています。
この予防のために、世界保健機関と国連食料農業機関の合同専門家会合で、トランス脂肪酸の摂取量は「最大でも1日当たりの総エネルギー摂取量の1%未満にする」と結論づけました。その後、欧米諸国でトランス脂肪酸の規制が始まり、わが国でも関心が高まりました。
食品安全委員会によれば、日本人のトランス脂肪酸の平均摂取量は、1日当たり1.56g、総摂取エネルギーに占める割合は0.7%と推計され、「最大でも1日当たりの総エネルギー摂取量の1%未満」を満たす結果となっています。諸外国(例えば、米国人の平均摂取量は1日当たり5.8g、総摂取エネルギーに占める割合2.6%)と比較して日本人の摂取量は少ないのです。
しかし、脂肪の多い菓子類や食品を食べ過ぎると、平均を大きく上回る可能性があるので注意が必要としています。リスクの低減方法として「揚げ油を繰り返し使わない」、「動物・植物・魚由来の脂肪をバランスよく摂取する」「脂肪の過剰な摂取を控える」などが挙げられています。
油脂の摂取量が過剰にならない伝統的な日本型の食生活を営めば、トランス脂肪酸のリスクは回避できます。そういうわけで、トランス脂肪酸を必要以上に怖がる理由はなさそうです。