耳慣れないアクリルアミドとは、主に工業用途で使われる漏水防止剤、またシェービングジェルや整髪料などの化粧品類に用いられるポリアクリルアミドの原料です。問題にされたのは、水に溶けにくい性質を利用しているポリアクリルアミドではなく、その原料となる水に溶けやすい性質をもつアクリルアミドの方です。なぜこのアクリルアミドが問題になったのでしょうか。
ヒトがアクリルアミドを大量に食べたり、吸ったり、触れたりすると、神経障害を起こします。また、国際機関は、動物実験の結果から、長期または繰り返しアクリルアミドに暴露されるヒトにも発ガン性があると評価しています。だから、職業上アクリルアミドにさらされている人たちの健康に影響があるだろうと考えられていました。
ところが、2002年4月にスウェーデンの食品庁とストックホルム大学が行なった研究の結果、炭水化物を多く含むイモ類を焼く、または揚げることにより、アクリルアミドが生成されるということが初めてわかりました。思いもよらず、アクリルアミドが食べものの中に含まれていたので、世界中の食品安全行政局に衝撃を与えたといわれています。
だからといって、アクリルアミドが私たちを脅かすものかというと、そうではないようです。なぜならば、最近になって食品中に高濃度のアクリルアミドが含まれていることが判明しただけで、私たち人間が火を使う調理をするようになってからは、きっとアクリルアミドを口にしてきたはずです。だから、これまで通りの食生活をすれば怖がる必要はなく、日本も含めた各国の公的機関が、食生活を変えるようにとは指導していません。
しかし、高濃度にアクリルアミドが含まれているものを、わざわざたくさん食べる必要はないでしょう。頻繁に炭水化物を多く含んだ揚げ物を食べたり、揚げたお菓子をばかり選んだりしないことは、生活習慣病の予防のためにも望ましいと思います。