栄養相談外来で「やせる薬ってないんですか」と、相談者に真剣な表情で尋ねられることがあります。その気持ちはよくよくわかりますが、「やせる薬」といわれるものには気をつけなければいけません。
「ホスピタルダイエット」などといわれるダイエット用のカプセル剤や錠剤の服用による、健康被害が疑われる事例が複数の都道府県から報告されています。「ホスピタルダイエット」は、インターネットのホームページを利用し、海外の病院が処方したものを個人輸入によって入手されています。また、旅行先の病院で直接処方してもらう「ホスピタルダイエットツアー」という企画もあります。病院で処方されるから「安全」で「安心」というイメージをもちますが、そうではなさそうです。
「ホスピタルダイエット」の服用によって、微熱や動悸、体重減少といった症状があらわれ、医師の診察を受けると、甲状腺機能亢進症状が認められ、血液検査をすると、甲状腺ホルモンが高かった、などの報告があります。また、死亡事例もあり、平成17年に神奈川県内の20代の女性が急性心不全で亡くなっています。これでは「安全」とも「安心」とも思えません。
そして、「ホスピタルダイエット」というものには、国内で未承認の医薬品成分や向精神薬が含まれていました。このような向精神薬が含まれる製品を海外から輸入する事は、インターネットなどで個人輸入する場合であっても、麻薬及び向精神薬取締法で禁じられています。また、個人輸入した医薬品を業として販売、譲渡した場合は、薬事法違反になります。
特別な病気をもつ方々はともかくも、インターネットのホームページなどを利用して薬を手に入れたり、友人から薬をもらったりするのはやめましょう。もしも薬が手元にあるのなら、服用しないでください。
薬はそのさじ加減によって、病気を治すありがたいものにもなりますし、健康被害をもたらす怖いものにもなります。だから、医師が診察し、診断してから処方されるのです。