夫が真夜中に突然起き上がりトイレに駆け込んだ。あまりの慌てぶりなので追いかけた。すると、便器をかかえていた。嘔吐が落ち着き布団に戻ると、子どもたちが起きて心配そうにしていた。「大丈夫よ」と声をかけ、横になった。その瞬間。夫はまたも突然起き上がり、トイレに駆け込もうとした。ところが、子どもたちの目の前で、布団の上にかぐわしい黄土色の池が造られてしまった。翌朝病院で医師は「牡蠣や貝とかを食べましたか?感染性胃腸炎のようですが」と言った。夫は前夜の牡蠣のお好み焼きを恨んでいた、と…。
ノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒は1年を通して発生します。とくに11月から4月にかけて流行します。ノロウイルス感染症は、牡蠣やアサリなどの二枚貝の生食による食中毒が有名ですが、学校などの集団施設でヒトからヒトに感染し、爆発的に流行することがあります。つまり、感染経路はノロウイルスに汚染された食品を食べた場合と、感染した人のふん便や嘔吐物を介した場合です。
主な症状は、吐き気、嘔吐、下痢です。通常便に血は混じらず、高い熱が出たりはしません。感染してから発病するまでの潜伏期間、症状の持続する期間、ともに数時間〜数日(1〜2日)と短期間です。感染するとウイルスは1週間程度ふん便とともに排出されます。下痢止め薬は発症当初から使わず、吐き気止めや整腸剤などの薬が処方されるのが一般的です。ノロウイルスに効果のある抗ウイルス剤はなく、ワクチンもありません。そのため、治療は対症療法に限られ、脱水症状を起したり、体力を消耗したりしないようにします。脱水症状がひどい場合は、病院で点滴を行うこともあります。
では、予防方法です。ノロウイルスに汚染された二枚貝の生食や加熱不足が原因になることを考えると、十分な加熱をこころがけたいものです。食品の中心温度85℃以上で、1分間以上加熱すれば感染性がなくなるとされています。また。外出後やトイレに行った後、調理や食事の前、嘔吐物、便を処理した後は手洗いをする。手洗いの目安は、こすり洗いは30秒とされています。