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セミナー

春日部おやこ劇場・レポート
年末に“春日部おやこ劇場”さんより、「みんなで子育ち講座・子どもとはっぴぃ3」の講演を依頼されました。頂戴しましたテーマは「『食』はコミュニケーション〜少食だって偏食だって個性だよ〜」でした。
そして先日2/1(火)、私から1時間お話させていただいた後、グループワークと質疑応答を1時間行いました。当日は、和やかに楽しくすすめられ、私もみなさんのご意見に大変勉強をさせていただき、有意義な時間を過ごすことが出来ました。その内容を簡単にまとめましたので、ご報告させていただきます。

 打ち合わせの際、ご参加下さる方々は、乳児をもつ方から子育ても終わりに近づき、ご両親のお世話をされている方々と伺いました。すると対象の年齢層が広くなるので、子どもに限らずお年を召した方にも共通する「おいしく食べる」ということをキーワードにしました。そして「おいしく食べる」ということの大切さを次のようにお話しいたしました。
 以前、大学病院に勤務していた時、担当した患者さんの中には、食道ガンや嚥下障害などのために、口から食事がとれなくなってしまった方が何人かおられました。その方々が「食」に求めていたこととは、人間が生きるために必要な栄養素を満たすことはもちろんですが、それと同時に口から食べ、「おいしい」食事を楽しむということでした。それは、からだの栄養を満たすことと同じように、こころの栄養を満たすことであり、「食」を介して人や社会とのかかわりをもつこと、これを別のいい方にすれば「食のコミュニケーション」とも言えるでしょう。つまり、「食」は生物学的に生きるためのものだけではなく、心理社会的に生きるためのものでもある、ということです。だから、どちらかが欠けたり、どちらかに偏ったりすれば、こころやからだに影響が出てしまいます。では、そうならないために、どうすれば良いのでしょうか。
 それは、「おいしく食べること」です。これまでの研究から「おいしい」と思って食べることが、こころとからだに様々な影響を与えていることがわかります。
その研究のエッセンスを「おいしいだけでまるもうけ」と題して、以下にあげてみます。(ここでは詳しい内容を書くことが出来ませんので、最後にある参考文献をぜひお読み下さって、ご理解いただきたく思います。)
@ 消化液がたくさん出る。からだは栄養素をとりこむための準備をととのえ、消化や吸収をよくします*1)*2)。
A おいしさで免疫力アップ!血液中のたんぱく質や白血球が増え、唾液の中のイムノグロブリンも増え、からだの免疫機能があがると考えられています*3)。
B おいしく食べれば太りにくい。食後に起こる「エネルギーのムダ使い」によって体温が高くなり、エネルギーを放出する。おいしそうなものを見ると食べる前からインスリンが出始めるので代謝の準備がととのう*4)*5) 。

ということは、イヤな気分で食べたり、食欲がないのに無理に食べたり、「まずそう」と思って食べたのでは身になりにくい、ということでもあります。


さらに、「おいしく食べる」ためのこころがけを以下に3つ示します。

@ 「いただきます」と「ごちそうさま」をいう。食べものは、命のある生きものです。私たちは命のリレーをしていることを忘れずに、食べものに感謝の気持ちをもちたい。
A 食事のマナーを守る。汚い言葉や危険なことをした時は、毅然とした態度でやめさせる。共に食卓を囲む人にイヤな思いをさせてはいけない。
B ガミガミは危険な時だけ。「早く食べなさい」「残さず食べなさい」「きれいに食べなさい」というのではなく、「おいしいね」の声かけをどんどんする。


偏食や少食に悩む時は、必要な栄養素がちゃんととれているかどうか心配になります。けれども、それは少し横に置き、まずは「おいしく」「たのしく」「ニコニコ」している食卓かどうか考えてみることがとても大切です。


このお話の後のグループワークでは、「食」の悩みを話し合っていただきました。話の中心は、偏食や少食、そして栄養素のとり方でしたが、会話がすすんでいくと、栄養素の種類や量などの細かいことにこだわり過ぎて、苦しんでしまわないようにしよう。「おいしく」食べることを大切にしよう。と、話はまとまりました。この会によって、子育てや介護の肩の荷を、ほんの少しでもおろすことが出来たのなら嬉しいかぎりです。「春日部おやこ劇場」のみなさん、ありがとうございました。

2005年2月 土澤明子
参考文献

1) 池見酉次郎「心療内科」中公新書,1963
2) 菅野廣一「『食』と『こころ』」学建書院,1999
3) 山本隆 「おいしいとなぜ食べ過ぎる?」知のWebマガジンen 11号,2003
4) 中村丁次 「考える食卓」NTT出版,1994
5) 中村丁次 「ごはんでイキイキ健康ライフ」食糧庁・米流通消費対策室,1991
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