三井広報委員会 トップページへ
三井ゴールデン・グラブ賞
HOME > 三井ゴールデン・グラブ賞 > セカンド 片岡安祐美の「守備の達人に会いたい」
セカンド 片岡安祐美の守備の達人に会いたいVol.2
守備のベストナインを選ぶ2007年度の『三井ゴールデン・グラブ賞』が発表されました。受賞された18名の選手の皆さん、おめでとうございます!
今年は、セ・リーグでは日本一に輝いた中日の選手が5人も選ばれ、パ・リーグでは日本ハムとロッテが9つのポジションを分け合う形になりました。
名手ぞろいの18名ですが、勝手ながらその中から、私、片岡安祐美がNo.1を選ばせていただきます! 鉄壁二遊間の名コンビ、荒木雅博選手と井端弘和選手(中日)です。
 日本一の名コンビ≠象徴するのは「スイッチトス」プレー。私は、これを見ると、感動して、全身に鳥肌が立ちます。練習では出来ても、試合では一度も成功したことがない憧れのプレー。04年にお二人の二遊間が固定されてから、毎年一度は達成されている鳥肌シーン≠、今シーズンも見ることができました。10月19日、クライマックスシリーズの対巨人第2戦で、木佐貫投手の打った打球でした。
   センター前に抜けようかというゴロ。必死で追う荒木選手。逆シングルでキャッチ。そのままの体勢で、走り込んでくる井端選手にグラブトス。井端選手の矢のような一塁送球。アウト!
 これぞプロ、という究極の技を見せつけられたシーンです。常にボールに集中して、一歩先を読みながら、「全員で一つのアウトを取ろう」という守備の意識が徹底してないと出来ないプレーです。この抜群のコンビネーションは、高度な技術と、それを支える地道な努力、そして信頼関係から生まれるのだと思います。
 荒木選手は、重度のイップス(精神的な理由により、まともなプレーが出来なくなること)に陥って悩み、必死に練習を積み重ねてこれを克服した経験があるそうです。私も、02年の女子野球世界選手権に出場したとき、イップスに陥りました。初めての日本代表で、慣れないフロリダ遠征、しかも二塁手は私一人だけで7試合フル出場しなければいけない、という状況がいつの間にかプレッシャーになって、一塁までのたった数メートルの送球が怖くて、満足に右腕を振れなくなってしまったのです。決定的な悪送球にこそなりませんでしたが、送球があちこちにバラついて、「ボールが飛んでこなければいいな」とビクビクしながら守る状態が4試合続きました。
 そのとき支えになったのは、「どんな送球でも捕るから、思い切って投げて」という一塁手の先輩の心遣いと、観戦していた父の「お前のエラーで負けても、その時は使った監督の責任なんだ。開き直ってやれ!」との励ましでした。こういう周囲の気持ちに応えたくて、近距離で速い球を投げ込むキャッチボールを繰り返して練習するうちに、恐怖感が次第に薄れて、残り3試合は普通にプレーすることができました。
 それからは、自分では精神的に一回り成長できたように思います。
 一方の井端選手は、というと、こちらも決してトントン拍子で今の地位に登りつめたわけではないようです。後輩の福留孝介選手にポジションを奪われたり、ケガの後遺症から視力悪化に悩み、二度の手術を余儀なくされたりと…。
 井端選手のキャリアは、実は今の私にとって、とても励みになります。約2か月前に右足の親指関節にボールを当て、骨折しました。治療に1か月、リハビリに1か月。2か月ものブランクはやはり大きく、体力的にもプレー的にもまだ本調子とはいきません。せっかくつかみかけていた二塁のレギュラーポジションでしたが、また一から出直しです。
 守備って、練習しないでいると、すぐにヘタになるんです。1球1球、すべてが違う打球に対して、瞬間的に正しく反応するのは、非常に難しく、奥深く、だからこそ面白いのだ、と私は思います。
 尊敬するチームの先輩、酒井忠晴選手(元中日、ロッテ、楽天)はこうおっしゃっています。
「バッティングは打率3割で大成功、つまり7割は失敗していい。でも、守備は常に10割成功が要求される。なのに、どうしてみんな、守備練習より打撃練習ばかりするのか?」
 いつ、どんなふうに飛んでくるかわからない打球を待ち構える一瞬の緊張感。次の瞬間のファインプレー。プロ野球を盛り上げてくれるのは、やはりそうした華やかなプレーと、そこから感じられる精神力の強さや努力の積み重ねであるのに違いありません。
 プロ入り3年目で初めて受賞したダルビッシュ有選手(日本ハム)や、パ・リーグで5回も受賞し、今回はセ・リーグで初受賞の中村紀洋選手(中日)。そして、05年には二塁手で受賞し、今回は遊撃手として初受賞のTSUYOSHI選手(ロッテ)など、ほかにも話題いっぱいの07年度『三井ゴールデン・グラブ賞』ですが、表彰式にはちゃっかりおじゃまして、その模様をリポートさせていただきます。
≫vol.3へ
volume1
volume2
volume3
片岡安祐美プロフィール
かたおか・あゆみ
1986年熊本県生まれ。身長153p、血液型B型。
茨城ゴールデンゴールズ所属、背番号1、右投右打。
流通経済大学在学中。
関連サイト
COPYRIGHT:© The Mitsui Public Relations Committee. all rights reserved.