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給食の時間には小学校1年生の教室に入り、白衣を着るところから、配膳、そして片付けまでをサポートしたり、残食量を毎日量ったりしているので、子どもたちの好き嫌いの傾向はよーくわかります。魚、あえもの、煮物、酢のものなどのメニューが人気ないですね。 |
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ウチの子どもの小学校でも、先日、野菜サラダの献立の時に、全校児童600人に対し240人分も残ったという話を聞きました。 |
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そうですか…。一生懸命作ったものが、1時間も経つとグチャグチャの残食として戻ってきてしまうのは、やはりがっかりですね…。 |
S: |
あぁ〜、そういう作る側の気持ちって、実は子どもたちにはあまり見えていないかもしれません。 |
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さらに、その残食はただ単に生ゴミとして廃棄するのではなく、お金を払って回収してもらっているんですよ! |
S: |
以前、どこかのホームページでお金を払って焼却処分しているという話を読んだことはあったのですが…。その学校だけの話ではなくて、多くの学校で行われていることなのですね! ちょっとショックです。このことも、給食を食べる子どもたちも、親たちも、知らなければならない事実だと思うのですが…。 |
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そうですね。加えて、とにかく残食量を減らせばそれでいいのか、という問題もあって…。子どもたちに食べて欲しいメニューと、人気メニューのギャップが大きすぎて困っています。人気メニューを多くすれば、当然残食量は減ると思うのですが、それは違う。どうしたらみんな、何でも食べてくれるのでしょう? |
S: |
今までは「からだにイイから食べなさい」とか、「食べないと病気になっちゃうよ」とか、そういうアプローチが多かったと思うんです。でも大した病気をしたことがない子どもたちにはどうも実感がわかない。以前に農水省の食育講座で、「お味噌汁を一口残して捨てたら、その水に魚が棲めるようになるためには70リットルもの水が必要なんだ」という話が出たところ、いつもは給食を残してしまう小学校1年生の女の子が、「魚が死んじゃう」と言いながら嫌いなものでも一生懸命食べたというのです。これからは、栄養という側面以外でも、「食」に興味や関心をもてる入り口を用意していこうという意識が必要なんだと思います。 |
T: |
そうですね。からだを養う「食」の科学的な側面だけではなく、「食」の営みというこころを育てる文化的な側面も、しっかり伝えていかなければいけないと思います。そして何よりも「私たち人間が生きていられるのは、生き物の命をいただいているからなんだ」という本質を、頭ではなくこころの深いところで感じて、その感謝の気持ちから何でも食べてもらえたら、とってもうれしいなぁと思っています。 |
S: |
それらをどうやって子どもたちに伝えていくのか…。今は家庭のあり方もさまざまです。すべての子どもたちに直接伝えることができるという点からも、学校における「食育」に期待したいですね。そのあり方を、そろそろ本気で議論しなければならない時期にきていると思います。 |