S: |
私は、食べること、料理することを大人が楽しむ姿を見ていれば、子どもたちは自然に「食」に興味を持つのではないかと思っているんです。だから、普段の食事もおいしいものを作りたいと思うし、週末となれば友達をよんで大いに飲み、食べ、おしゃべりを楽しみます。子どもたちにもその準備を手伝ってもらうようにして、家族で楽しめる機会にしています。 |
T: |
なるほど、それは楽しそうですね! 最近、多くの家庭では和食よりも、洋食や中華料理が食卓に並ぶことが多いと言われていますが…。 |
S: |
給食で人気がないという、あえもの、煮物、酢のものについても、家で作らなければ、その延長で学校でも食べないのかもしれません。でも普段から「馴染みのない食べものでも、食べてみようね」と声かけをしているかどうかだけで、子どもたちの意識は違ってくるはずなんですけれどね…。 |
T: |
ほかにも、朝食に何も食べてこないとか、親から500円を渡されて夕食に牛丼やからあげ丼を子どもだけで食べに行く、コンビニにお弁当を買いに行く、なんてこともよく聞く話です。 |
S: |
「買い食いをする」という経験も、たまには楽しくていいのでしょうが、そんなことが毎日続くのはおかしいですよね。それに、例えばコンビニでお弁当を買うにしても、おにぎりだけ、パンだけを買ってしまうのか、あるいは野菜のおかずを一緒に買おうと思えるのか…。これからは自分で適切なものを選べる力を養って行かなければならないでしょうね。
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T: |
栄養バランスがよい食事というのは、家庭での毎日の食卓や一緒に料理をすることなどを通して、自然に学ぶものなのでしょう。でも、実際には家庭が「食」の学びの場になっていなかったりする。それならばと、栄養士が正論を持ってその家の「食」に関わる。すると、かえって家庭の混乱を招いてしまうこともあります。「食」はその家庭の状況をよく表しますから、親や子どもが自分自身の食卓を「他人に知られたくない」という気持ちを持っていると、どうしても栄養士の関わり方は難しくなってしまうんです。 |
S: |
なるほど…。食育の基本はやはり家庭で行われるべきものだと思うのですが、実際には、それができていないケースも少なくないのが現状です。「家でやらなくては」と、ただ繰り返していても、その間に、子どもたちはどんどん成長してしまいます。大人、特に親に対する食育も別に考えなければならないとは思いますが、学校のようにすべての子どもたちが属する場所で食育を行って、子どもたちに直接働きかけ、その方法、内容をしっかり考えていかなくてはいけない時期に来ていると思うのです。 |
T: |
その通りですね。それぞれの家庭にはそれぞれの事情があります。そうしたくても、わかっていても出来なくて悩んでおられる親も少なくない。「食育」は、悪いところを見つけて困らせたり、悲しませたりするものではない。悩んでいる親に「なぜ出来ないのか」と原因を問うことではなく、子どもたちが自分の力で自分のこころとからだを守り、生き抜く知恵を一日も早く身につけられるように働きかけることだと思うのです。私も教育現場の栄養士として、この働きかけの方法と内容をしっかり考えていこうと思います。 |
◆《おまけ》夏のお弁当について…
今回の対談のお供は、サカイさんが当日の朝焼いてくださったという「きなこの和風ケーキ」と、「生のハーブティ」。雨の中、サカイさん自らが、その場でお庭からササッと摘んできた数種類のハーブ(レモングラス、スペアミント、ラベンダー、レモンバーム、オーデコロンミント…)をポットに入れ、お湯を注ぎ…。見た目も香りもとってもさわやかな「ハーブティ」の出来上がりです。おいしかったです!
また、「きなこの和風ケーキ」については、土澤さんから、「手で握ったおにぎりより衛生的でお弁当向きかも! もち粉が入っているので、腹持ちも良さそうですし、オーブンでしっかり加熱してある点も安心」。とのコメントがありました。なるほど、参考になりますね!
さらに「これからの季節は特に、手につくブドウ球菌というバイ菌が心配です。これがついた食べ物が室温に放置されると、菌は2時間くらいで急激に増え、それを食べると食中毒を起してしまうことも…。なので、手で握ったおにぎりはちょっと…。もし、おにぎりを握るなら、使い捨て手袋やラップを使って握ってください!」とのことです。みなさん、気をつけましょう!!
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