「ブリと呼ばれるその日まで」
凛々しいブリのあの輝きと艶やかさ、何とも魅力的です。しかし、その輝きと艶が出るまで、何度も名前を変えました。本日は、ブリさんに語っていただきましょう。
九州で生まれた私は、はじめ「もじゃこ」という名前でした。バカにされそうな名前と思いますでしょ。そうなんです。けれども周りの人に助けられ、コツコツ泳いで生き抜きましたら、「はまち」という名になりました。その後は「わらさ」の名前をもらい、少し世間様にも知られてきたんですが、「味はあるんだけど、脂のノリがいまひとつ」と言われるように、なかなか魅力を出し切れません。それでも自分を信じて泳ぎ続けていましたら、気がつくとそこは北海道。寒さをこらえ、ぐるりと回って、暖かな故郷に戻る頃、身長は1メール、体重も10キロほどになり、お腹に子どもを抱えました。そんな私を人は「寒ブリ」と呼び、美しくて、おいしいと、喜んで食べてくれました。
ブリとなった私の特徴は、パルミトオレイン酸(POA)が豊富なことです。これは、脳の血管に栄養を補いつつ、血管の壁を強くする働きがあると言われています。つまり、柔軟でありながら強靭な血管をつくるのです。みなさんのお役に立てれば、ブリと呼ばれるこの日まで、泳ぎ続けた苦労は報われます。どうぞおいしく召し上がり、私の命を移しかえ、みなさんのなかで生かして下さい。 |